男性が2000年7月に受診したクリニックの「受診状況等証明書」。カルテはなく、この日が初診日だと証明できる具体的な情報はなかった=2025年5月13日、東京都内、黒田早織撮影

 障害年金の申請には病院の「初診日」の証明が原則必須だが、その証明が難しくて受給できないケースが後を絶たない。心身に不調を感じてから診断確定まで長い年数を要するなどで、初診時の資料が処分されてしまうためだ。初診日を証明するために裁判をするしかないケースもある。

 都内の50代男性は、統合失調症を理由に2020年に障害年金を国に申請した。しかし、20年前の初診日を証明できなかった。病院の医療記録の保管義務は法律上、5年間とされ、資料が処分されていた。

 不調が始まったのは、会社員だった00年。体が動かないほどのだるさや不眠に襲われた。部署の異動で仕事が変わり、上司のパワハラも重なった。

 この年の7月に病院を受診したが、診断は「異常なし」。だが、体調は悪化し、頭の中で人の声が聞こえる幻聴にも悩まされ、会社を辞めた。一時はひきこもり状態になり、3年後に精神科を受診。統合失調症と診断された。

 その後に何度も働こうとしたが、病気のため続かなかった。経済的に厳しく、20年に障害年金を申請した。

結果は「不支給」 残された道は

 結果は「不支給」。「初診日が確認できない」との理由だった。

 障害年金の受給には、障害の…

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