第78回カンヌ国際映画祭は24日、最高賞パルムドールにイランのジャファル・パナヒ監督の「シンプル・アクシデント」を選んで閉幕した。受賞作に共通するテーマは、憎悪や弾圧への抵抗。今年のカンヌのコンペティション部門を振り返る。
- カンヌ映画祭、イランのパナヒ監督作に最高賞 監督は3大映画祭制覇
「暴力ではなく、他人のことを聞く耳を持つことを訴えています」。審査員長の俳優ジュリエット・ビノシュは、パルムドール作品についてそう語った。「復讐(ふくしゅう)や暴力の時代である今、必要な映画です」
政治的な理由で投獄された主人公が自分を拷問したとみられる男性を偶然見つけ、その男性を殺そうとするストーリー。前半はコメディー要素を織り交ぜるが、主人公が本当に復讐をするべきか立ち止まって考えるようになると、シリアスな調子に変化していく。映画は「復讐」や「国家による暴力」へのアンチテーゼになっている。
イランは政治的な弾圧が激しいとされ、パナヒ監督も刑務所に入った経験がある。授賞式後の会見でパナヒ監督は「イランの仲間たちは自由を求めて闘っている。この映画で暴力の連鎖を終わらせる解決策を探した」と力強く語った。
2席のグランプリには、ノルウェーのヨアキム・トリアー監督の「センチメンタル・バリュー」が選ばれた。家庭を顧みない映画監督の父と、両親の不仲が原因で心に傷を抱えた舞台俳優の娘の物語だ。娘は父への怒りを抑えられず、父には娘への理解が欠けているが、2人とも心のどこかで関係を修復したいと願っている。トリアー監督は公式上映後の会見で「和解」を描きたかったと明かした。「私たちは互いを理解し合えると信じる必要がある。怒りでは前に進めない」
監督賞と男優賞を受けたブラジルのクレベール・メンドンサ・フィリオ監督の「シークレット・エージェント」は、軍事政権下の1977年のブラジルが舞台。政治的理由で逃亡生活を余儀なくされるが、力強く生き抜く男性を描く。
審査員賞の一つ、オリバー・ラクセ監督のスペイン・フランス合作「シラット」は、親子が砂漠地帯で出会ったヒッピー的な集団と協力して悪路を旅する。一行は互いに心の傷を癒やしあい、誰ひとり見捨てないよう懸命に動く。
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こうした受賞作の選定は、1…