カンボジアから移送された容疑者ら=2025年8月20日午後6時47分、愛知県常滑市の中部空港、小玉重隆撮影

 カンボジア北西部・ポイペトの拠点で特殊詐欺に関与したとして、日本人の男女29人が詐欺未遂容疑で逮捕された事件で、愛知県警など6県警の合同捜査本部は10日、別の詐欺未遂容疑で全員を再逮捕し、発表した。詐欺電話の「かけ子」をして、詐欺で得た収益の数%が現金や仮想通貨で報酬として支払われていたが、実績が悪ければ暴行を受けることもあったという。県警はいずれの認否も明らかにしていない。

 県警によると、29人は19~52歳の男28人と50歳の女1人。再逮捕容疑は5月、警察官などをかたってポイペトの拠点から京都府舞鶴市の団体職員の男性(63)に「マネーロンダリング事件に関与している疑いがある」などと電話をかけ、現金をだまし取ろうとしたというもの。男性が警察に問い合わせ、うその電話だと気づいた。

 拠点は中国人に管理されていたとみられる。容疑者の中には、詐欺の実績が悪かったり、「日本に帰りたい」と言ったりしたため、管理者側から、殴られたり、腕をナイフで傷つけられたり、鼓膜をターボライターで焼かれたりする暴行を受けた者もいるという。

 拠点は塀で囲まれていたが、内部にはコンビニや風俗店、床屋などがあった。拠点外のファストフード店に出前依頼もできたが、外出は許可制だった。ライオンやトラなどの猛獣を拠点内で見たと話す容疑者もいるという。

 「お金を稼げる」と他から勧誘された者のほか、借金返済のために自ら渡航した者もいた。重要度や難易度が高い「警察官役」は他より報酬が高く設定されていたという。

 1月に現地から帰国した愛知県内の男性の情報提供を端緒に、5月に現地当局が拠点を捜索し、29人を拘束。8月に日本に移送され、詐欺未遂容疑で逮捕された。

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