カーディーラーに設置された「まちなか自習室」。一般の客も商談などで訪れている=2025年8月21日午後1時58分、神戸市東灘区、宮坂奈津撮影

 ガラス張りのカーディーラーのショールームで熱心に宿題をする中学生たち。周りには、テレビを見ながら商談を待つ一般客の姿もある。神戸市は7月から、協力してくれる店舗や施設に中高生が自習できるスペースを設ける取り組みを始めている。

 取り組みには8月末時点で、市内42店舗が協力している。カーディーラーやショッピングセンターのフードコート、カフェなどが、テーブルの一角を自習スペースとして無料で提供している。

 中高生はスマートフォンで専用サイトから利用登録すると、空き状況をチェックできる。スマホがなくても登録証を紙に印刷して持って行けば利用可能。

「自習スペースもっと増やして」

 市はこれまでも、各区の文化センターや図書館など市内に計約1300席の自習コーナーを設けてきた。だが、昨年2~4月に小中高生を対象に実施した「神戸市こどものアンケート調査」で、自由記述欄に「自習コーナーをもっと増やして欲しい」という要望が全体で2番目に多かったという。

 これを受け、市は今年度当初予算に「まちなか自習室」を設置するため、2千万円を計上し、市内で約300席を確保した。協力店舗には子どもの利用人数1人あたり150円を市が委託した事業者から支払う。

 防犯面も考慮し、協力店舗になるには自習スペースに従業員ら大人が常時いることを要件にしている。

 カーディーラーで勉強していた市立本庄中3年の中越穂希さんは「まさに求めていた場所です」と声を弾ませる。「学校の教室はいつも開いているわけではないし、図書館は大学生や大人の人たちが多くて私語禁止のイメージ。緊張します」と話す。

 カフェを利用するにも、毎回飲み物を買うのは中学生のお財布には痛い。友人と気軽に使える自習スペースがあったらいいなと思っていたという。

「放課後の受け皿に」自分たちで紹介ポスターも作成

 この日は生徒会の友人の片木心さん、三好唯稀さんと勉強した。思い思いのテキストを広げながら、和気あいあいと宿題を進めた。

 場所を提供する兵庫トヨタ自動車甲南店の藤井宏店長は「他のお客さんもあまり気にしていない様子です」と話した。

 3人は、所属する生徒会担当の教員から夏休み前にまちなか自習室の存在を聞いた。実際に使ってみて「ぜひ広めたい」と思い、他の生徒に向けて自習室を紹介することにした。「ここがオススメポイント」など、感想をまとめたポスターをつくった。その後、多くの生徒の目に触れるように校舎の昇降口近くに掲示した。

 本庄中の来代剛行校長は「教員の人繰り上、教室を開けてあげたくてもできない日もある。放課後の時間の使い方が多様化する中で、受け皿になっているのでありがたい」と話した。

共有
Exit mobile version