イスラエル軍とパレスチナ自治区のイスラム組織ハマスとの戦闘開始から1年1カ月が経ち、ガザでの死者は4万3千人にのぼっています。ガザで生きる人々の姿を伝えようと、フリージャーナリストの土井敏邦さん(71)=横浜市=は、映画「ガザからの報告」を制作し、公開しました。ガザで30年以上の取材歴があり、現地の知人を通じて今も取材を続けている土井さんに、ガザの現状をどう見ているかや、映画を通して伝えたいことを聞きました。
――映画では、ガザ北部ジャバリヤの難民キャンプで暮らす家族を25年にわたって追いかけています。映画を制作したのはなぜですか。
昨年10月7日のハマスによる越境攻撃の直後から、国際社会の反応に歯がゆい思いがありました。欧米諸国の首脳たちが、ハマスの攻撃を非難し、イスラエルを支援する様子を伝える報道を見て、すべてが昨年10月7日から始まったような印象を与えてしまうのではないかと思いました。
今のガザの惨状は、イスラエルの長年の占領政策が背景にあります。特に、1993年のイスラエルと(将来の独立した)パレスチナの平和共存を目指すオスロ合意が、ガザの人々の暮らしをどう変えたのかを市民の目線から伝えたいと思い、映画を制作しました。
和平ではなかったオスロ合意
――ガザの人々にとって、オスロ合意とは何だったと考えていますか。
私は、93年9月のオスロ合…