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イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザ北部からの避難命令を出した後、荷物を持って逃げる人たち=2025年5月22日、ロイター

 パレスチナ自治区ガザの人道危機が極まっている。イスラエルのネタニヤフ首相は「ガザ全域の制圧」の強硬姿勢を押し出し、軍事作戦を激化させている。支援物資の搬入が2カ月半ぶりに再開したが、必要な量にはほど遠く、国際社会からのイスラエルへの批判が急速に高まっている。

 ガザ北部ジャバリヤ出身のファヘド・ムハンマドさん(37)はイスラエル軍の攻撃から逃れるため、妻と3人の娘とともに9回の避難を重ね、今は北部のキャンプでテント暮らしを送る。22日、朝日新聞の現地スタッフの取材に「どこに行っても爆撃にさらされている。もうガザに安全な場所はない」と語った。

「このままでは死に絶えてしまう」

 最近のイスラエル軍の猛攻のため、路上の遺体は、民間防衛隊ですら回収できず放置されたままで、野良犬が群がっているという。ムハンマドさんは「国際社会、特に米国と欧州諸国には、イスラエルに虐殺をやめさせてほしい。このままでは我々は死に絶え、歴史上の存在になってしまう」と訴える。

 イスラエル軍はイスラム組織ハマスとの2カ月の停戦後、3月中旬にガザへの攻撃を再開。今月16日に新たな軍事作戦の開始を宣言して空爆を激化させ、18日には大規模な地上作戦を始めた。ガザ保健省によると、2023年10月にガザでの戦闘が始まって以降のパレスチナ人の死者数は5万3千人を超え、うち子どもが1万6千人以上を占める。3月の戦闘再開以降も3600人以上が犠牲となり、最近は1日の死者が100人を超える日も増えている。

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パレスチナ自治区ガザ北部ジャバリヤで2025年5月19日、支援の食料を手に入れようとする人たち=AP

 新たな軍事作戦について、イスラエルのネタニヤフ首相は21日の記者会見で、「最終的にはガザの全域がイスラエルの管理下に入り、ハマスは完全に敗北する」と述べた。その上で、「ガザを完全に非軍事化し、トランプ(米大統領の)計画を遂行する」とした。トランプ氏は2月にガザの住民を域外に移住させ、米国がガザを「所有」して再開発する構想を明らかにした。

 国連人道問題調整事務所(O…

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