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今年1月中旬ごろの長野市内のガソリンスタンドではレギュラーが1リットルあたり194円と表示されていた=2025年1月17日、長野市内、遠藤和希撮影

 全国的にみてもガソリン価格が高いといわれる長野県で店頭価格を調整するカルテル行為があった疑惑が浮上し、事業者団体「長野県石油商業組合」の第三者委員会は30日、組合で「組織的に調整がおこなわれていた」と認定する報告書を発表した。

  • 長野のガソリンは価格調整のせいで高いのか? 組合幹部は全否定

 長野県のレギュラーガソリン1リットルあたりの平均小売価格は今年1月中旬まで22週連続で全国一を記録。製油所からの輸送費や中山間地で営む小規模事業者の多さなどが高値の要因とされてきたが、組合加盟社によるカルテル疑惑が浮上し、公正取引委員会も2月に立ち入り検査に入っていた。

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長野県のガソリン価格の推移
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1月14日と6月23日のレギュラーガソリン平均価格の都道府県別順位

 組合は3月末に弁護士4人で構成する第三者委を設置し、組合員へのアンケートやヒアリングを実施してきた。組合には県内約750のスタンドの約7割が加盟するとされる。

 報告書によると、県内8支部のうち、長野市を中心とする北信と佐久、上伊那の少なくとも3支部で、店頭価格の上げ幅や下げ幅、改定の時期について、支部長から地区長などを通じて組合員などに連絡する行為が確認された。調整に応じない場合、周辺の組合員から支部長に報告されることもあったという。

 組合や支部は周辺地域の価格動向調査を組織的におこなっていて、これらの活動が組合員に「相当な同調圧力」をもたらしていたと指摘した。一部の支部の価格の上げ下げの連絡は組合本部の理事長や専務理事にも共有されていたが、黙認していたと認定した。

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長野県石油商業組合に提出した報告書について説明する第三者委員会の田下佳代委員長(右から2人目)ら=2025年6月30日午後2時、長野市、高木文子撮影

 調整に応じない組合員に対し、専務理事が調整に応じるよう訪問していた例も確認されたという。第三者委は、組合員間の価格調整行為や、組合による組織的な価格制限行為が独占禁止法にそれぞれ抵触すると評価した。

 2月上旬に地元紙報道で疑惑が浮上し、組合は2月末に「報道の事実確認はできなかった」と県に報告した。第三者委は、この報告も、組合は事前調整を把握していたのに「隠して報告しなかった」と認定した。

 第三者委は調整の開始時期を特定できなかった。ただ、2008年に石油元売り会社の卸売価格が毎週変動するようになったことが契機になった可能性を指摘。多くの組合員が、価格連絡によって周辺との安値競争を避け、スタンド経営を続けるための利益を確保できるメリットを感じていたとした。

 組合の高見沢秀茂理事長は30日の記者会見で「内容結果を極めて重く深刻に受け止めている」と陳謝したが、自身を含めた組合幹部は「(調整を)知らなかった」と関与を否定。さらに北信支部長を更迭したことを明らかにし、自身の辞任を否定した。価格調整に応じさせるために組合員を訪問したと指摘された専務理事も「選挙の応援を依頼しただけ」と述べた。

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記者会見する長野県石油商業組合の高見沢秀茂理事長(中央)や平林一修専務理事(右端)ら=2025年6月30日、長野市、小山裕一撮影

 全国石油商業組合連合会(全石連)の広報担当者は、報告書を精査中だとした上で「消費者に不信感をもたせたり心配をかけたりしている。ゆゆしき事態」と話した。

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