もしもおばあちゃんにガールフレンドがいたら、どうだっただろう?

 私はきっと、今よりずっと生きやすかっただろう。家族の中に、自分以外にもクィア(性的少数者)がいるということなのだから。ただ現実には、どうしたら家族に理解してもらえるか、孤独に悩むクィアは多い。実際、私がカミングアウトした際母は「おばあちゃんがボケててよかった」と言っていた。常に夫や息子たちが食べ終えてから食事をしていた保守的な祖母が、私のカミングアウトを受け入れるとは考えづらいからだ。

水上文の文化をクィアする

誰かが脇に追いやられる。そんな社会を、作品の読み解きを通じて問い直します。批評家・文筆家の水上文さんによるコラムです。

 でももちろん、祖母世代にだってその前だって、クィアはずっと存在していた。台湾同志ホットライン協会によるインタビュー集「おばあちゃんのガールフレンド」はそれを、雄弁に物語っている。おさめられているのは、50代から80代の、17人のクィア女性のオーラルヒストリー。登場する最年長の人物は、1938年生まれ。私の祖母よりも上の世代だ。本書は中高年クィア女性の様々な人生を伝えると共に、50年代から現在までのクィアを取り巻く環境の変化、台湾レズビアン・コミュニティーの発展史を描き出すものにもなっている。

 2019年にアジアで初めて…

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