(19日、第97回選抜高校野球大会1回戦 滋賀短大付0―15敦賀気比)
保木淳監督が全幅の信頼を寄せて送り出したエース左腕、桜本拓夢(ひろむ)投手(3年)は序盤からつかまっていた。だが、四回。渾身(こんしん)の直球に、未来の可能性を感じ取った。
相手は四死球で2打席連続出塁させていた敦賀気比の好打者、岡部飛雄馬(ひゅうま)選手(3年)。公式戦の打率が5割を超す強打者である。
変化球でボールを二つ出した後、直球で押した。「ピンチでもあったし、ギアを上げた」。最後は120キロの直球で見逃し三振に切って取った。桜本投手にとって、この試合唯一奪った三振だった。
選抜切符をたぐり寄せたのは、昨秋の近畿大会1回戦、大阪1位の履正社戦での勝利。その立役者が桜本投手だ。「打てそうで打てない」と仲間が評する「軟投」が、滋賀短大付の生命線だった。
「状態が上がらなかった」と本人は言う。しかしそれは、一冬を越して直球のキレが増し、制御がうまくできなかったのが原因。岡部選手から奪った三振は、桜本投手の成長の証しと言える。
「まだまだ自分の実力がなかった。この悔しさを糧にします」。昨年より4センチ伸びて166センチになったというサウスポーの夏に期待したい。