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博多港に停泊したままの高速船「クイーンビートル」=2024年10月17日午前9時48分、福岡市博多区、日吉健吾撮影
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 JR九州高速船(福岡市博多区)が日韓高速船「クイーンビートル」の浸水を隠して約3カ月運航していた問題で、福岡海上保安部は9日、法人としての同社と田中渉・前社長(56)ら当時の役員、社員、船長ら計8人を船舶安全法違反(臨時検査不受検航行)や、全国初適用となる海上運送法の安全確保命令違反などの疑いで書類送検し、発表した。

 福岡海保によると、前社長らは昨年2月13日から5月30日の間、船首部分に浸水を確認したのに臨時検査を受けず、運航を続けるなどした疑い。

 また、今回とは別の浸水事案で2023年6月に国土交通省から安全確保命令の行政処分を受け、船の異常をすみやかに報告することなどが求められていたのに従わなかった命令違反の疑いでも送検された。

 前社長らは容疑を認め、「浸水を報告した場合、運航停止になる可能性が高く、キャンセル対応などで過剰な事務負担が生じることを懸念し、報告しなかった」などと話しているという。

 命令違反については、22年に北海道・知床半島沖であった観光船沈没事故を受けた法改正で厳罰化。それまで法人と個人に100万円以下の罰金を科す罰則だったが、法人には1億円以下の罰金、個人には1年以下の懲役か150万円以下の罰金、またはその両方が科されることになった。国交省によると罰則が適用されたケースは過去になく、海保は「意図的かつ繰り返し違反が行われ、悪質だと考えている」としている。

 クイーンビートルは定員502人で、福岡・博多港と韓国・釜山港を片道3時間40分で往復していた高速船。1991年から運航していた「ビートル」に代わって22年11月に就航したが、親会社のJR九州が昨年12月、運航再開と船舶事業からの撤退を決定した。

クイーンビートルをめぐる主な経緯

2022年11月 日韓航路に就航

 23年2月 運航会社のJR九州高速船が浸水を報告せず3日間運航

   6月 国土交通省が海上運送法に基づく安全確保命令

   7月 同社が改善報告書提出

   11月 船舶安全法違反の罪で同社に罰金30万円の略式命令

 24年2月 船首部分で浸水。臨時検査を受けず5月まで運航

   8月 同省の監査で浸水隠しが発覚。運航停止

   9月 同省が再び安全確保命令

   10月 福岡海上保安部が同社と船内を捜索

      同社が改善報告書提出

   12月 親会社のJR九州が運航再開断念などを発表

※JR九州の公表資料などから

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