ツキノワグマの出没が多発し、人身被害が脅威となっている秋田県。クマによる負傷者を数多く治療してきた秋田大医学部付属病院(秋田市)の医師らが、症例の知見を一冊の本にまとめた。医学専門書ながら、異例の売れ行きで注目を集めている。
4月に出版された「クマ外傷~クマージェンシー・メディシン」(新興医学出版社)。クマによる外傷の特徴や治療法に特化した専門書は過去に例がないという。
2023年は全国でクマの出没が相次ぎ、クマによる人身被害が急増した。中でも秋田は全国最多の70人と突出して被害が集中し、秋田大病院では例年の5倍以上となる21人の患者を受け入れた。
編著を手掛けた同院の中永(なかえ)士師明(はじめ)・高度救命救急センター長(61)は「多くの症例から得られた知見を医療関係者に伝えるとともに、一般の人にもクマから身を守る参考にしてほしい」と話す。
書籍では、21人のうち同センターに搬送された20人を分析した。患者の平均年齢は74・5歳で、男性が13人を占めた。受傷場所は市街地が15人で、山林が5人。搬送のピークは10月の7人で、受傷の時間帯に傾向はなかった。
被害は顔面に集中、骨折や眼球破裂…
患者は顔面の負傷が9割に達…