「今日は良い天気ですね。平穏な一日になりそうですね」。3月13日午前、東京・永田町の国会内。自民党国会対策委員会の会合に出席した政府高官は、出席者らとこんな会話を交わしたことを覚えている。
- 「選挙勝たないと」懇談会で首相発言 政治活動否定した商品券問題
それから程なくして事態は一変する。「朝日新聞が石破茂首相の商品券配布をめぐって関係者を取材している」――。複数の政府関係者によると、こんな情報が党幹事長室を通じて首相官邸に寄せられ、官邸内は極度に緊迫した。政府高官がすぐさま事実確認のために石破氏の事務所に連絡を取ると、「3日の首相公邸での懇談会に関し、10万円分の商品券を新人議員15人に渡した」と認めた。突如、官邸の頭上に降りかかった問題に、政府高官は「ああ……」と嘆息した。
カネに固執しないクリーンな政治家というイメージが、石破氏の強みの一つだった。自民派閥の裏金問題をきっかけに前政権が倒れた後、石破氏が国民的人気を得て総裁に選ばれた理由はそこにある。ある首相周辺は「10万円の商品券をやりとりする古い自民党と石破さんは同じだと言いたいのか」と漏らし、問題が報道されれば政権が大打撃を受けると危機感をあらわにした。
官邸と党は、報道対応の方針を決めるため、党本部のコンプライアンス担当の関係者と極秘に協議を行った。この関係者は、政治活動に関する寄付を禁じた政治資金規正法21条の2を根拠に、石破氏の商品券配布は「政治活動にあたらないため、法律には抵触しない」との見解を示した。
この見解をもとに、官邸では…