かつては街中を駆け巡っていたのに、近年ぱたりと見なくなった車がある。座席と荷台が一体となった、独特の形状を持つあのトラック。ヤマト運輸の宅配専用車だ。
誕生のきっかけは、九州のある支店がベニヤ板で試作するところから始めたというプロジェクトだった。その経験は、製造が終了した今でも引き継がれていた。
車の名称は「クイックデリバリー」。1982年にトヨタ自動車が製造を始め、「クロネコヤマトの宅急便」のCMにも登場するなど、ヤマトの「顔」であり、事業を支える足だった。1.25トンと2トンの2モデルがあり、2回のフルモデルチェンジを経た後の2016年に製造が終了。ヤマトでも「引退」した。
乗員スペースと荷室が分かれている一般的なトラックと違い、両方が一体となっている点が特徴だ。ドライバーが車道に降りずに車内を移動して荷物の出し入れができるため、「ウォークスルーバン」とも呼ばれる。
この車は、「荷室内で立って作業できるバンがほしい」というヤマトの要望をもとに、同社とトヨタがつくったものだった。
斬新なデザインの車はどうやって生まれたのでしょうか。当時の社長の言葉に心を動かされた、有志の人々の活躍がありました。
ヤマトとトヨタによると、「…