What Do You Do When A.I. Takes Your Voice?
2023年夏のある日、ポール・スカイ・レーマンさんとリネア・セージさんは、予約を入れていたニューヨークの自宅近くの病院へ向かう車の中で、ポッドキャストに耳を傾けていた。番組のテーマは、AI(人工知能)の台頭と、それが作家や俳優など、エンターテインメント業界の人々の生活に与える脅威だった。
ともに声優として働いている若い夫婦にとっては、とりわけ重要な関心事だった。AI技術が本物そっくりの声を作り出せるようになっている、というのだから。
聴いているうちに、番組は意外な展開になった。AIの脅威を強調する狙いから、ホスト役はポーと名付けられた対話型チャットボットに長いインタビューを行った。なんとそのチャットボットの声が、レーマンさんの声とそっくりだったのだ。
「ホスト役は私の声と会話していた。AIの危険性やエンターテインメント業界にもたらしかねない悪影響について」と、レーマンさんはその時の驚きについて語った。「車をとめた。これは何なのだ、どうすべきなのか、と思いをめぐらせる私たちは、まったく信じられない思いでじっと座ったままだった」
- 【注目記事を翻訳】連載「NYTから読み解く世界」
自分たちの声をもとに作製されたクローン音声に出くわし、ショックを受けた夫妻。NYTの取材に「私たちは自分の声を、自分自身を、そして自分のキャリアを取り戻したい」と語ります。
■妻のクローン音声もあった…