子どものころの奥野真由さん。食べることが大好きだった=奥野さん提供

 「あれ、また寝てるの」

 奥野真由さん(31)が、家族にたびたび言われるようになったのは10歳の時だった。

 小学校から帰ってくると、なぜか疲れて寝てしまう。次第に、ほおがこけるほどやせてきた。

 原因不明の高熱が出て、おなかの痛みと下痢が続く。とうとう大きな病院に入院することになった。

 「まずはおなかの調子を治そう」

 様々な検査のあと、主治医から説明され、薬による治療が始まった。腸を休ませるために食事を制限して栄養剤を飲む治療も始まった。

 3カ月後、ようやく症状が落ち着き、退院が決まった。

 退院にあたり、主治医から聞かされた。

 「クローン病という病気で、今のところは治らないけど、いつか研究が進むかもしれない。しばらくは病気と付き合っていこうね」

 クローン病は腸などに炎症が起きつづける難病だ。これからも薬を飲み続けたり、脂質の多い食べ物を控えたりする必要があった。

 「入院中と同じような生活が続くんだな」。不安よりも、家に帰れる喜びが大きかった。

クローン病の薬=奥野真由さん提供

 退院後も症状は落ち着き、母が弁当を作ってくれて通学を再開した。たまにおなかが痛くなったり、食べられないものがあったりするけれど、ほかの友人たちとさほど変わらない生活を送った。

病気の話をすると込み上げる涙、なぜ?

 高校3年生のころに小さな転機が訪れた。

 卒業後の進路を、管理栄養士…

共有
Exit mobile version