今月発表された各国の性別による格差をまとめた「ジェンダーギャップ報告書」で、日本は146カ国中、118位となり、主要7カ国で最下位でした。私立武蔵高等学校中学校(東京)の社会の入試問題をもとに、「ケア労働」における性別格差について、実践女子大学の山根純佳教授(社会学)に解説してもらいました。
家庭の中の家事・育児・介護などの「ケア労働」は、自分でニーズを満たせない子どもや高齢者に対する労働で、「無償労働(アンペイドワーク)」の代表的なものです。
経済学では長らく、労働とは「市場で賃金が支払われるもの」と考えられてきました。しかし、1979年に国連で女性差別撤廃条約が採択されると、アンペイドワークが議論されるようになり、95年の国連の世界女性会議(北京女性会議)を機に、アンペイドワークの評価が求められるようになりました。
日本では、97年にアンペイドワークの貨幣評価を初めて公表し、91年のGDP(国内総生産)ベースで約99兆円でした。2011年は約138兆円、21年は約146兆円と、その評価額は上がっています。
家庭の子育てや家事は、市場の労働力を再生産するもので、ケア労働があってこそ資本制は回っていきます。また、生涯誰からも世話をされずに過ごせる人はいません。その意味で、ケア労働は価値ある労働です。
それにもかかわらず、ケア労働にかける時間の男女差は現在でも是正されていません。理由は大きく分けて二つあります。
「ケア労働=女性」が合理的に見えるわけ
一つ目は、「家事や育児など…