北海の井尻瑛斗記録員=2025年7月25日、札幌市豊平区、朽木誠一郎撮影

 第107回全国高校野球選手権大会(朝日新聞社、日本高校野球連盟主催)第6日の第2試合で東海大熊本星翔(熊本)と対戦が予定されている北海。先月30日に関西入りした。翌日から、現地で本格的な練習をしている。

 練習中、誰より多くの仕事を任されているのが、井尻瑛斗記録員(3年)だ。グラウンドに水をまき、ストップウォッチを持って終了時間を大声で知らせ、守備練習ではノッカーに球を渡す。小さなホワイトボードを使って監督や部長と練習内容について相談したかと思えば、実戦形式の練習では球審を務めていた。

 もちろん試合ではスコアをつけ、集計する記録員の仕事もある。1人で何役もこなす井尻記録員を、佐藤瞭磨主将は「チームに欠かせない存在で、いつも助かっている」と評する。

 井尻記録員はもともとは控え投手だった。しかし、2年生の5月、利き腕の右手を骨折した。秋季大会までの復帰は絶望的で「ショックは大きかった」。失意の中にいた8月、平川敦監督から記録員への転向を勧められた。選手ではなくなり、試合には出られない。迷いがあった。

 決めあぐねていた井尻記録員に、3学年上で北海の主将だった兄の琉斗さんが声をかけた。「記録員はチームの役に立てる大切な仕事」「誰かがやらなきゃいけない」。励まされた。前向きな気持ちで記録員を引き受けた。

 いまはチームの勝利に貢献したいという思いが原動力だ。任される仕事の中で、特に気に入っているのはバッティングピッチャー。今でも投げることが好きだからだ。

 チームは夏の甲子園にたどり着いた。兄には「記録員は良い経験になったよ」と伝えるつもりだ。

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