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【動画】「ゲームオタク」がノーベル賞受賞? 福岡伸一教授にきく、今年の化学賞

 9日に発表された今年のノーベル化学賞は、前日の物理学賞に続き、人工知能(AI)にかかわる研究に贈られることが決まった。分子生物学者の福岡伸一さんに解説してもらった。福岡さんは「生物学はコンピューターで解明する『イン・シリコ』の時代が来た」とし、「AIは多くの場面で『最適な解』を導き出すが、それがいつも真実とは限らない。人間による検証が必要なことは今後も変わらない」と語った。

  • ノーベル化学賞、グーグル・ディープマインド社のAI研究者ら3人へ

 今年の化学賞は、生命現象の中で最も大事な、たんぱく質の構造を予測する人工知能(AI)のプログラムの設計に関する研究をした3人に決まりました。物理学賞は「AIの父」と呼ばれる研究者でしたし、今年のノーベル賞はまさに「AI祭り」ですね。

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分子生物学者の福岡伸一さん

 生物学の研究は、古くはネズミなどの実験動物を使って現象を解明する「イン・ビボ」(生体内)、次に細胞など生物の一部を取り出して生命現象を再現する「イン・ビトロ」(試験管内)になりました。今回の受賞対象の研究をみると、それがAIを使って研究する「イン・シリコ」(コンピューター内)の時代が来たんだなと感じます。

 今年の化学賞は、たんぱく質の構造研究に焦点が当たりました。化学反応をつかさどる「酵素」も、免疫反応に関わる「抗体」もたんぱく質。筋肉を動かすのもそうです。生命研究の中で最も重要な対象の一つです。たんぱく質の基本要素はアミノ酸。体内では性質の違う20種のアミノ酸がいろいろな組み合わせでつながり、ユニークで様々な働きをするたんぱく質ができています。

 受賞が決まった3人のひとり、デイビッド・ベイカー氏は、アミノ酸を人工的につなげて、自然界にはないたんぱく質をつくった業績が評価されました。

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化学賞を受賞するデイビッド・ベイカー氏(左)、デミス・ハサビス氏(中)、ジョン・ジャンパー氏=ノーベル財団のウェブサイトから

私も含めて「そんなバカな」

 2020年、研究の世界にとんでもないニュースが研究者の間を駆け巡りました。「アルファフォールド2」というソフトを使うと、アミノ酸配列からたんぱく質の立体構造が簡単にわかるというのです。私も含めて、誰もが「そんなバカな」と思いました。

 それまでは構造生物学者たち…

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