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 新緑の匂いに包まれた東京都あきる野市。季節の花を咲かせる個人宅の庭を一般に開放する「オープンガーデン」の取り組みを行っている同市で、一軒の家を訪ね、鳥のさえずりを聞きながら生命力あふれる庭を見せてもらった。

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 幅16メートルほどの庭にはびっしりとコケ類が生え、ケヤキやサルスベリ、イワヒバなどが茂る。様々な植物が庭の中に配置され、まるで野山のような風景を生み出すさまに、思わずしゃがみ込んで見入ってしまった。

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幼い頃に駆け回った野山をイメージしながら整備してきたという庭=2025年5月29日、東京都あきる野市

 庭のあるじ、川名国男さん(77)は30年近くかけてこの庭を作り上げてきた。「コケの美しさ、生命力の強さに引きつけられてきた。特に雨上がりの生命力がよみがえった姿は本当に美しい」と話す。

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「幼少期に駆け回った野山をイメージしています」と「縮景苔庭」を説明する川名国男さん=2025年5月29日、東京都あきる野市

 花を通じてコミュニケーションの輪を広げようとはじまった同市の「オープンガーデン」。バラやビオラなど、色彩豊かな花々を育てる家が多い中、川名さんはコケで作った庭を「縮景苔庭(しゅっけいこけにわ)」と自ら名付け、独特の世界を作り上げている。

 コケを切り取って岩などにはり付けておくと、そこに定着する。その作業を根気強く続けてきた。鳥や風が運んできた種が岩間などから生えて、ケヤキやヒメシャラなどが景色に彩りを加える。記者が訪れた時は、ミニバラが美しく咲いていた。

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「縮景苔庭」を作るために、切り取ったコケを岩などにはり付ける地道な作業を続けてきた=2025年5月29日午前10時54分、東京都あきる野市、石川瀬里撮影

 川名さんは調布市の深大寺周…

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