夢洲から
お昼時。大阪・関西万博のシンボル「大屋根リング」の下のベンチで、来場者がおにぎりやパン、お弁当などを思い思いに広げていた。
堺市の古川貴史さん(50)の家族は、ベトナム館でフォーやココナツジュースを買っていた。
気になるお味は?
小学4年生の楓珠さんは、学校の給食で出たフォーと比べて「こっちの方が麺が甘い気がする」。大きなココナツに刺さったストローでジュースを飲んだ中学3年の稟珠さんは「全然甘くなくてびっくり」と、予想外の味を楽しんでいた。
貴史さんたちはイタリアやフランスなどの人気パビリオンに行ってみたかったが、すぐには入れなかった。そこで、サウジアラビアやアゼルバイジャンなど「行きそうにない国」をめぐってみたら、面白かったという。
「行ったことのない国に『行った感』、関わりのなかった国の文化に『触れた感』が得られるのは、万博やからこそ」と、笑った。
私も、初めてココナツジュースを飲んだ時のことを思い出した。
子どものころ、1990年に大阪であった「国際花と緑の博覧会(花博)」の会場。独特の香りと甘みの無さで、その時はおいしくなかった。
だが、そのおいしくなかったことをよく覚えている。花博で見たものは何も覚えていないのに。
こういう味の体験こそが、人それぞれの万博の「レガシー」になる、というのは言い過ぎか。
◇
世界中の人々が集まり、連日多彩なイベントが開かれる大阪・関西万博。会場の夢洲(ゆめしま)で取材に駆け回る記者たちが、日々のできごとや感じた悲喜こもごもを伝えます。