アッケシソウの育ち具合を見る越田薫子さん=2024年8月2日午後1時32分、川崎市麻生区の明治大黒川農場、角野貴之撮影

 北海道や岡山県の海岸などに生え、秋の色づきからサンゴ草とも呼ばれるアッケシソウ。そんな植物が塩害に苦しむ世界を救うかもしれない。

 明治大大学院の研究チームが挿し木の手法による増殖法を論文にして英学術誌で発表した。論文の査読者は「塩害が世界中に広がる昨今、タイムリーかつ貴重な情報」と評した。

 アッケシソウは国内では環境省指定の絶滅危惧Ⅱ類で希少な植物だが、海外では北半球の汽水域の湿地や干潟に分布し、「シーアスパラガス」などの名前で野菜として出回っている。近年の研究で、塩害地での土壌の浄化、アンチエイジングや抗がん作用、バイオ燃料化に期待が寄せられている。

 ただ、発芽しにくく、個々の成長に大きなばらつきがある。これが安定的な栽培、流通に向けた規格化の障害になる。

 明大大学院の修士2年で、フィールド先端農学研究室の越田薫子さん、植物工場での生産を研究する伊藤善一専任講師(施設園芸学)、川岸康司特任教授(園芸学)の共著による論文は、1919年創刊の英国の園芸学術誌「The Journal of Horticultural Science and Biotechnology」電子版で、現地時間9月13日に配信された。

国内では絶滅危惧種に指定されているアッケシソウ。
記事後半では、増殖法の研究のためにどうしても素材を手に入れたい研究者の試行錯誤やひらめきの過程が描かれています。

研究結果が示す新たな可能性

 草丈10~30センチに成長させたアッケシソウの茎の先端約6センチを切り、培養液と塩水にトレーで浸す。温度を管理した室内で電灯で照らすと根が生えて育つ。いわゆる「挿し木」の手法だ。

 実験では、培養液と塩水の濃度などを最適にすれば9割超の茎が12日間で根が生えた。これなら種子から発芽までの難しい過程を省け、簡単、短期に増やせる。品種改良や市場に安定供給する可能性がみえた。

 水耕に適した塩水や培養液の濃度もわかった。この手法を用いれば、耐塩性の高さをいかし、淡水が無くても栽培を始められる可能性を論文にまとめた。

 園芸学に詳しい千葉大名誉教授で、園芸植物育種研究所の丸尾達理事長は「アッケシソウは研究が進んで注目度は増していたが、増殖の研究がそれほど進んでいない」と指摘。「途上国でも取り組める簡単な方法で産業化に大きく役立つ可能性がある」と話した。

■発見の”タネ”は英語の授業…

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