植物と人間とのかかわりを、龍谷大学教授の落合雪野さん(58)は「着るもの」から問いかけている。
ラオスの村 女性たちに魅せられて
衣食住のなかでも「衣」のグローバル化は著しい。より安く作られ、より多くの人が欲しがる商品が大陸をまたいで行き来している。それぞれの土地に、ローカルな「衣」があることを忘れていないだろうか。
落合さんはフィールドに出て、その営みを記録し、伝統を継ぐ作り手たちと共に手を動かす。それは、地域で素材を使い続けながら技術を守る「動態保存」の実践でもある。
「村のおばちゃん、おばあちゃんはマルチな働きぶりで、ビジネスセンスにたけたリーダー役もいる。コットンとともに、いまを生きる女性たちに魅せられました」。昨年のラオスでの調査を、そう振り返る。ラオスを研究対象にして20年あまり。今回は勤務先の研究休暇制度でユネスコ世界遺産の古都ルアンプラバンに滞在し、伝統的な綿織物の生産現場を歩いてきた。
シルクではなくコットンを選んだのは、普段着の布だからだ。日本では近代化で綿花栽培がすたれ、自給率はほぼ0%に。復活の動きは各地であるものの、畑から始まる暮らしの文化は一度途切れている。
訪ねたのはアカ、タイなど民族も様々な10あまりの村で、どこも「着るもの」を作るのは女性の仕事だった。ワタを育て、収穫した綿花から糸を紡ぎ、草木や泥で染め、機で布を織る。
山の斜面の焼き畑での重労働、布を美しく仕上げていく繊細な手仕事。ひとりの中に、多岐にわたる知識や技術と、それをやりくりする知恵が備わっている。
ラオスの綿織物の品質は海外…