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ストラホチナの聖マキシミリアノ修道院に隣接する教会の前で咲いた紅豊=2025年4月18日、ポーランド、けがれなき聖母の騎士聖フランシスコ修道女会提供

 本土最北端の北海道稚内市よりもさらに北、北緯49度にあるポーランドの女子修道院のそばで4月半ば、日本の桜が薄紅色の花を咲かせた。その桜は、八重桜「紅豊(べにゆたか)」。北海道七飯(ななえ)町の浅利政俊さん(94)が30年以上前に贈ったものだ。桜には、浅利さんの平和への願いが込められている。

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 小学校教諭だった浅利さんは、寒冷地でも育つように、と桜の品種改良を続けてきた。そんな浅利さんの元に1987年、依頼があった。

 「コルベ神父が開いたポーランドの修道院に、あなたの桜を植えたい」

 マキシミリアノ・コルベ神父は、アウシュビッツ強制収容所で死刑宣告された人の身代わりになり、殉教した人だ。神父を敬慕する日本人の女性信者が浅利さんに頼んだのだ。

 浅利さんは快諾し、ワルシャワ近郊のニエポカラノフ修道院に300本を超える苗木を送った。

 さらに、コルベ神父の教えを受け継ぐ長崎県諫早市の「けがれなき聖母の騎士聖フランシスコ修道女会」からも頼まれ、ポーランド南東部ストラホチナの聖マキシミリアノ修道院にも北海道の野生種を中心に40本を送った。その中の1本が品種改良で作り出した紅豊だった。

桜の花は国境を越える

 浅利さんが引き受けたのには理由がある。

コルベ神父ゆかりの修道院に根付いた日本の桜の前で生まれた、ある出会いについて記事後半で写真とともに紹介します。

 北海道函館市に近い大野村(…

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