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2016年リオデジャネイロ・パラリンピックのシッティングバレー女子決勝でプレーする米国代表のニッキー・ニエベス⑯=ロイター
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 よくチームメートから相談される。周りからは「ポジティブ」とも言われる。

 「誰にだってうまくいかない日はある。そこでいかに前向きになれるか。自分がどう行動するかが大事」

 シッティングバレー女子米国代表のニッキー・ニエベス(34)はそう語る。2016年リオデジャネイロ・パラリンピックで米国の金メダルに貢献したベテラン選手だ。18年には年齢や性別、人種、身体能力問わず、座っていても立っていてもバレーボールができる環境を提供する非営利団体をつくり活動している。

 パリ大会で金メダルを目指すチームの中心選手の一人で、信頼は厚い。選手たちの投票で開会式では米国選手団の旗手を務めることが決まった。

 ニエベスは生まれつき左手がない。はっきりとした原因は分かっていないが、母親の胎内にいる間にへその緒が巻き付いた可能性があると医師たちはみている。小学6年のころからバレーボールを始め、大学生のころ米バレーボール協会から誘われてシッティングバレーに転向した。11年から米代表でプレーする。

今後は助ける側へ

 実は、精神的に苦しんだ時期もあった。

 健常者にまじってバレーに熱中していた学生時代、能力よりも左手がないことばかりに注目が集まり嫌になったこともある。不安にかられることもある。「時々自分だけのスペースや、一人になる時間が必要」

 20年、新型コロナウイルスの感染が拡大し東京パラリンピックが1年延期が決まるとひどく落ち込んだ。大会にピークを合わせられるよう準備してきただけに、すべてが台無しになった気分になった。

 このときはチームメートの存在で救われた。ただ、本当の試練は1年後に待っていた。

 順当に代表に選ばれ、東京パ…

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