小説家・宇野碧の「回り道しかしていない」
読む本を選ぶ時は、意識しないと同じ傾向の本ばかりに偏りがちだ。そこで私は時々、「自分では絶対に選ばない本」をあえて手に取ることにしている。
ある時、そんなふうに「コンサル一年目が学ぶこと」という本を「あえて」読んでみたところ、とても面白く読んだ。「コンサル」という言葉にはしばしば、肩書だけで内実が伴わない胡散(うさん)臭さであるとか、ブルシットジョブ的なイメージを感じていたりしたのだけれど、そういった偏見が取り払われたし、読むだけで自分の生産性や効率性がアップして、仕事ができる人間になったような錯覚を得られた。
とても有意義な読書だったなあ、と思っていたのだけれど、読み終わって数日間、なんだか体の調子がどこかおかしいような感じが続いた。例えるなら、酸性とアルカリ性のどちらかに著しく傾いているような、バランスが取れていないような感覚。
そんな時に、たまたま図書館で選んで借りてきたのが、「ひどい民話を語る会」という本だった。京極夏彦さんをはじめとした民話を愛する面々が集まり、各自が見つけてきた日本全国のひどい民話を披露しあってひたすら「ひどい」と言い合う会の記録だ。
ひどい民話というのは、「隣…