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100年をたどる旅~核の呪縛~④進む終末時計

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 超大国同士が核兵器による威嚇を通じてバランスをとり続けたその先にいったい何が待っているのか。それを見据え、新たな一歩を踏み出したのが時の米ソ首脳、レーガン氏とゴルバチョフ氏でした。

 2024年8月6日の広島平和宣言は、今はなき2人の核大国リーダーの対話が冷戦を終結に導いたことにふれ、「為政者が断固とした決意で対話をするならば、危機的な状況を打破できることを示しています」と訴えた。

 30年以上前の出来事を思い返す必要があるのは、世界が逆回転を始めているからだ。

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戦略核兵器の使用を想定した演習の開始を宣言するプーチン大統領=2024年10月29日、ロシア大統領府の公式ホームページから

 長引くウクライナ戦争では、ロシア大統領のウラジーミル・プーチンが核の威嚇を躊躇(ちゅうちょ)しない。

 冷戦史に詳しい法政大名誉教授の下斗米伸夫はその要因を、冷戦時代の疑心暗鬼の復活とみる。「冷戦終結をロシア側は東西の共同作業と見ていたが、西側は自らの勝利とみなした」と指摘。東側の軍事同盟のワルシャワ条約機構は1991年に解散する一方、西側の北大西洋条約機構(NATO)は99年にポーランド、2004年に旧ソ連のバルト三国が加盟するなど東方への拡大を続け、ロシア領に近づいた。「ロシア側はそれを信義違反と捉え、対決姿勢を強めてきた」。それがウクライナ戦争につながっているという。

「核のボタン」握る為政者 緩む「核のタブー」

 この80年、被爆者たちが身を粉にして訴えてきたのは、核の使用だけでなく、開発や保有、威嚇といった、あらゆる「核のタブー」でした。しかし、「核のボタン」を握る為政者にとって、そのタブーは緩み続けています。

 長崎大学核兵器廃絶研究セン…

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