(10日、第106回全国高校野球選手権大会1回戦 山梨・日本航空―静岡・掛川西)
一塁走者だった日本航空の雨宮英斗(2年)はうれしさのあまり、ベンチから飛び出したチームメートたちの歓喜の輪に加わった。サヨナラ勝ちだと確信したからだ。
だが、大どんでん返しが待っていた。
7月19日、山梨大会での帝京三との準々決勝。同点で迎えた九回裏2死満塁、味方の打者が中前に打球をはじき返し、サヨナラの三塁走者が本塁に返った。
劇的勝利での試合終了のはずが、暗転する。
「一塁走者が二塁を踏んでいない」
相手からのアピールで、雨宮は二塁でフォースアウトに。得点は認められず、サヨナラ勝ちが消えた。
まさかの延長タイブレークに突入し、チームは十一回表に2点の勝ち越しを許した。その裏、1点差に詰め寄り、なお2死一、二塁。そこで雨宮に打順が回ってきた。打ち取られれば、最後の打者となる場面だ。
「ちょっと行ってきていいですか」
副主将の金子竜馬(3年)は監督の豊泉啓介の返事を待たず、一塁側ベンチを飛び出した。
雨宮は打撃の中心選手の一人。中学時代には日本代表に選ばれ、この試合では4番を任された。それでも、金子は後ろ姿を追いかけた。
「彼はミスをしている。まだ2年生。重圧に押し潰されてしまうかもしれない」
左打席の前で顔をのぞき込むと、雨宮は泣きじゃくっていた。
泣きじゃくる雨宮に、金子がとった行動
「自分で終わったらどうしよ…