山梨大会準々決勝の帝京三戦、十一回裏2死一、二塁で、打席に入ろうとする日本航空の雨宮英斗⑦のそばに駆け寄り、肩を何度もたたいて声をかける金子竜馬=2024年7月19日、甲府市の山日YBS球場、豊平森撮影

(10日、第106回全国高校野球選手権大会1回戦 山梨・日本航空―静岡・掛川西)

 一塁走者だった日本航空の雨宮英斗(2年)はうれしさのあまり、ベンチから飛び出したチームメートたちの歓喜の輪に加わった。サヨナラ勝ちだと確信したからだ。

 だが、大どんでん返しが待っていた。

 7月19日、山梨大会での帝京三との準々決勝。同点で迎えた九回裏2死満塁、味方の打者が中前に打球をはじき返し、サヨナラの三塁走者が本塁に返った。

 劇的勝利での試合終了のはずが、暗転する。

 「一塁走者が二塁を踏んでいない」

 相手からのアピールで、雨宮は二塁でフォースアウトに。得点は認められず、サヨナラ勝ちが消えた。

 まさかの延長タイブレークに突入し、チームは十一回表に2点の勝ち越しを許した。その裏、1点差に詰め寄り、なお2死一、二塁。そこで雨宮に打順が回ってきた。打ち取られれば、最後の打者となる場面だ。

 「ちょっと行ってきていいですか」

 副主将の金子竜馬(3年)は監督の豊泉啓介の返事を待たず、一塁側ベンチを飛び出した。

 雨宮は打撃の中心選手の一人。中学時代には日本代表に選ばれ、この試合では4番を任された。それでも、金子は後ろ姿を追いかけた。

 「彼はミスをしている。まだ2年生。重圧に押し潰されてしまうかもしれない」

 左打席の前で顔をのぞき込むと、雨宮は泣きじゃくっていた。

泣きじゃくる雨宮に、金子がとった行動

 「自分で終わったらどうしよ…

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