2017年6月下旬、砂ぼこりが舞うイラク北部モスルの旧市街の通りを装甲車が走ってきた。過激派組織「イスラム国」(IS)が占拠していた地域から解放された人たちが乗っていた。
装甲車に近づいた私は降りてきた住民たちの姿に言葉を失った。
げっそりとこけた頰、落ちくぼんだ目。壮絶な日々を物語っていた。
【動画】過激派組織「イスラム国」が「建国」を宣言してから10年がたったイラク北部モスル=其山史晃撮影
イラク軍などが16年10月からモスルの解放作戦を開始後、ISは空爆や重火器による攻撃を避けるため、住民を「人間の盾」として使う戦術を多用した。
モスル中心部で暮らす女性、ラニア(27)も人間の盾となった一人だ。
「恐怖と悲劇の3年間でした」
ラニアは今年6月の取材中、そう言って、突然ヒジャブ(髪を覆うスカーフ)を脱いでみせた。
その頭の左半分には髪がなかった。
【連載】過激思想と私 「イスラム国」は生きている
過激派組織「イスラム国」が「国家」を宣言して10年がたちました。「領土」は失われましたが、その思想は死んだのでしょうか。恐怖支配を経験した地で迫ります。
- 【連載初回】過激な「エリート教育」の果てに 子どもたちの心に起きた変化
自宅にロケット弾直撃 住宅街が戦場に
14年6月にISがモスルを支配し、当時高校生だったラニアの生活は一変した。
ヒスバと呼ばれる宗教警察は…