シリアの首都ダマスカスで2025年7月22日、同国西部で3月に発生した衝突をめぐる調査結果を記者会見で報告する調査委員会の関係者ら=ロイター

 シリアで3月に発生した少数派のイスラム教アラウィ派の民間人に対する大規模な殺害をめぐり、同国の暫定政権が立ち上げた調査委員会は22日、暫定政権側の武装勢力による「深刻な違反行為」があったと発表した。民間人の殺害を事実上認めたもので、少数派の保護を掲げる暫定政権の統治能力が問われている。

 シリア西部ラタキアなどでは3月、昨年12月に崩壊したアサド前政権を支持する武装勢力とイスラム教スンニ派主導の暫定政権が衝突した。在英NGOシリア人権監視団(SOHR)は、アサド前大統領が属したアラウィ派の民間人が暫定政権側の勢力に殺害されたと報告していた。

 シリア国営通信(SANA)が伝えた調査委の報告によると、アサド前政権を支持する武装勢力からの攻撃を受け、暫定政権の軍や各地から集まった武装勢力を含む計20万人以上の戦闘員が反撃に加わった。その過程で「民間人に対する広範囲にわたる深刻な違反行為があった」と認定された。

 調査委は一連の衝突によって、民間人を中心に1426人が殺害されたと報告。一方、暫定政権が民間人への攻撃を組織的に計画したわけではないとも結論づけた。

 シリアでは今月中旬、南部スウェイダ周辺でもイスラム教ドルーズ派とスンニ派のベドウィン(遊牧民)や暫定政権との間で衝突が発生。SOHRによると21日までに1200人以上が死亡したといい、暫定政権は治安の改善や宗派・民族間の融和に課題を抱えている。

 一方、米ネットメディアのアクシオスは22日、米国のバラック駐トルコ大使兼シリア特使と、イスラエルとシリア暫定政権の両高官が24日に会談する予定だと報じた。ドルーズ派の保護を掲げるイスラエルはシリアの首都ダマスカスを空爆するなど緊張が高まっており、米国は両者の関係改善を急いでいる。

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