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県立岐阜商業高校吹奏楽部の松岡風月さん(前列中央)たち=2025年8月27日、岐阜市、オザワ部長撮影
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My吹部seasons

 2025年の夏、高校野球の聖地・阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)は、ある公立高校の快進撃に沸いた。岐阜県立岐阜商業高校(岐阜市)だ。そのアルプススタンドで、同校の吹奏楽部が灼熱(しゃくねつ)の太陽以上に熱い演奏を響かせていた。甲子園大会の応援と並行して、彼ら自身もまた、吹奏楽コンクールの東海大会に挑む「もうひとつの夏」を生きていた。

 今年はちょうど創部100周年。節目の年に、吹奏楽部員たちは特別なひと夏の物語を駆け抜けた。

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 今年、同部の主将を務めるのは3年でテューバ担当の清水夏生(なつお)だ。中学時代はバスケットボール部だったが、「厳しい環境で自分磨きをしたい」と、県内の強豪として知られる県立岐阜商の吹奏楽部に飛び込んだ。

 同部には「We are Challenger」というスローガンがあるが、夏生は入部時からチャレンジャーだった。初心者ゆえに演奏技術の習得には苦心した。しかし、誰よりも大きな返事や練習中の声出しで、存在感を徐々に高め、伝統ある部のリーダーに選ばれた。

 そんな夏生が今年目指したのは、結果や成績ではなかった。

 「東海吹奏楽コンクール金賞、マーチングバンド全国大会の金賞という、部としての目標はありましたが、僕がいちばんに考えていたのは、結果よりも心。みんなに自分のやりたい演奏をしてほしいということでした」

 そうすれば、おのずと音楽に心が宿り、観客を感動させることができる。良い結果にもつながるだろう、と夏生は考えていた。

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甲子園で光る吹奏楽部 SNSでも話題に

 同校野球部も吹奏楽部と同様、長い伝統がある。今年は岐阜大会を制し、地元の声援を受けながら甲子園でも次々と強敵に勝利していった。

 夏生たちは岐阜大会から甲子園大会まで、すべての試合を全部員で応援した。猛暑の中での演奏は過酷だった。夏生はマーチングテューバを肩に担いで吹いたが、太陽光を受けた管体の中で空気が熱くなり、ブレスするとそれがのどに入り込んでくる。マウスピースもやけどしかねないほど熱くなるため、凍らせたペットボトルで冷やした。

 だが、甲子園にはそんな大変さを上回る興奮があった。

 「野球部が勝ち進むうちに期待も高まって。優勝候補だった横浜高校に勝利したときは『これは優勝も狙える!』とうれしくなりました」

 アルプススタンドの通路で踊…

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