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肥料にするため、スイカの残渣に米ぬかをかける生徒たち=2025年7月2日午前11時56分、鳥取県倉吉市、清野貴幸撮影
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 鳥取県は全国有数のスイカの産地で知られる。収穫後にはごみになるつるや葉などの「残渣(ざんさ)」で肥料を作り、イチゴ栽培に活用しようと、県立倉吉農業高校の生徒たちが実習で取り組んでいる。

 7月初め、倉吉市内の同校野菜圃場(ほじょう)で、生物科園芸コース3年の3人が作業をしていた。販売もしている小玉スイカを収穫した後に畑に残された、つるや葉、摘果した実などをかき集め、重さを量る。ハウス内の園地(約160平方メートル)から出た残渣は約1.5トンあった。

 堆肥(たいひ)化を促すため、1カ所に積んで米ぬかと混ぜ合わせる。1カ月弱で堆肥になるという。母親も卒業生という岡田奈々美さんは「SDGs(持続可能な開発目標)は今まであまり関心がなかったが、残渣を肥料にすることで社会に貢献できる」と話した。

 自校だけでこれほどスイカの残渣が出るのだから、県全体では相当な量になるはず。再利用すれば環境に配慮した農業につながる。今年創立140年の節目を迎えた倉吉農高ではそう考え、3年前から課題研究の授業で堆肥化に取り組んでいる。

 昨年度までの研究で、肥料としての成分は、通常使う牛糞(ふん)と遜色ないことを確認。サラダ水菜を育てる実験では草丈や葉の数などが牛糞を上回り、食味も良好だったという。コストが安く、化学肥料の使用を減らすことで温室効果ガスの低減にもつながると期待している。

 スイカ残渣を使った肥料は8月をめどにペレットにし、9月ごろ定植予定で栽培期間が比較的長いイチゴに活用する。同校では小玉スイカの収穫が6月ごろ終わるため、スイカからイチゴへ、年間を通じた循環農業の取り組みになる。これまでの実験でイチゴの酸味を減らす傾向が分かっていて、環境に配慮して栽培したことをPRしたブランドイチゴを目指すという。

 指導する裙本(つまもと)登海(ななみ)教諭は「視点を変えれば自分や周囲の人たち、ひいては環境にも良い影響を与える力を秘めていると気づくことがある。これから農業に取り組む可能性のある生徒たちには、そんな広い視野を持つきっかけになれば」と話す。スイカ残渣から作る肥料は秋の学校祭で販売する予定だ。

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