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ウォッチズ&ワンダーズの会場内に設置されたブランドのブース前には、多くの人が集まっていた=4月、スイス・ジュネーブ、後藤洋平撮影

記者コラム「多事奏論」 編集委員・後藤洋平

 2001年1月、ある有名人を関西空港で待つ、張り込み取材をしていた。当時の私はスポーツ紙の芸能担当記者。直撃取材の記事は、翌日の紙面にでかでかと掲載された。著名人たちへのそんなアポなし取材を、前職で幾度も重ねた。

 06年に朝日新聞に移ると京都、大阪と5年半、警察を担当。平日も週末も刑事宅へ「夜討ち朝駆け」を続けた。事件担当記者に「有休消化」や「男性の育休取得」の意識は乏しい時代。私生活は崩壊したが、張り込み取材のスキルは上げた、と思う(好きなわけでは全くない)。

 しかし、まさかスイス・ジュネーブの華やかなイベント会場で張り込み取材をするハメになるとは想像もしなかった。

 4月初旬、腕時計展示会ウォッチズ&ワンダーズ(WW)の取材中だった。ロレックスやパテックフィリップといった高級ブランドが新作を発表する、年間最大の腕時計見本市だ。

 例年通り各ブランドを回り、何人かの最高経営責任者(CEO)らをインタビューしたが、会期中に米トランプ大統領が「相互関税」をブチ上げたことで、3日目以降は一気に緊張感に包まれた。

中国経済の台頭、コロナ禍 時計業界は、その都度…

 各国の交渉で状況は刻々と変…

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