「森の駅」施設責任者の倉沢亮太さんと地元野菜をたっぷり使ったグローサリーピザ=2025年6月10日、長野市上ケ屋、志村亮撮影

 スキー場の閉鎖から5年あまり。代役を期待される観光施設が、地産地消の旗を振りながら、軌道に乗りつつある。

 長野市北部の飯綱高原・大座法師池(標高約1千メートル)のほとりにある「森の駅 Daizahoushi」は2022年春に開業した。車で市の中心から30分ほどだ。

 ガラス張りの木造建物の一つは「グローサラント棟」の名が付いている。グロッサリー(食料雑貨店)とレストランを組み合わせた言葉で、店内の食材をつかった料理を食べられる場所を意味するそうだ。実際、なかにはレストランとマルシェが共存している。

「森の駅」。ガラス張りの木造建築が景色に溶け込んでいる=2025年6月10日、長野市上ケ屋、志村亮撮影

 レストランでは、ぱりっとした葉物がのった「グローサリーピザ」(税込み1700円)、鹿肉入りの「信州森のスープカレー」(同1780円)など、彩り豊かなメニューを楽しめる。

鹿肉入りの「信州森のスープカレー」=エターナルストーリー提供

 マルシェでは、地元の生産者がもちこむ食材を買える。6月上旬の平日に訪れると、キャベツ、レタス、ダイコンなどに加え、ワラビ、フキ、ネマガリダケといった山菜が並んでいた。

「森の駅」のマルシェには地場の食料雑貨が並んでいた=2025年6月10日、長野市上ケ屋、志村亮撮影

かつては里谷選手の金メダルにわいた地

 この地区の観光の主役は1960年代から飯綱高原スキー場だった。98年長野冬季五輪ではフリースタイルスキー・女子モーグルの会場になり、里谷多英選手の金メダル獲得に沸いた。だが利用者が減り、2020年2月に閉鎖。市は代わりに新しい観光施設をつくり大座法師池のキャンプ場やボート乗り場と一体運営する計画を立てた。

 施設は、地元企業のエターナルストーリー(長野市)が指定管理者として運営する。経営が厳しくなった施設の再生ノウハウに定評がある。飯綱高原のホテル「信州天空resort ARCADIA」や長野市松代地区の温泉施設「コトリの湯」などの運営で実績を積んだ。市のコンペを勝ち抜き、建物の設計などの準備段階から携わった。

 同社で働く約100人の出身地は県内外でほぼ半分ずつ。「森の駅」で施設責任者を務める倉沢亮太さん(37)は「県外出身者の目線が、地元では当たり前にみえるものの魅力を再認識させてくれることが多い」と言う。自身は長野市に生まれ、東京で10年暮らして戻ったUターン組だ。

 たとえば、季節限定で販売する「信州産リンゴのりんご飴(あめ)」。あめ部分の薄さにこだわり、リンゴ自体のうまさもしっかり味わえるとヒットした。千葉県出身の村上達哉社長(39)の発案だった。倉沢さんは「地元からはなかなか出ないアイデア」と感じたという。

信州産リンゴのりんご飴=エターナルストーリー提供

 施設運営も改善を重ねる。キャンプ場に平地が少ないという声があれば、傾斜地にウッドデッキを設けてテントを張れる場所を増やした。繁忙期に駐車場が混むという苦情には、臨時駐車場の確保などで対応した。

 市によると「森の駅」には年12万人前後が訪れ、キャンプ場利用者は「森の駅」が開業する前の2~3倍に増えた。初年度に赤字だった収支は2年目に黒字化を果たした。3年目の24年度も黒字だったという。

共有
Exit mobile version