プレーオフを戦った芝野虎丸十段(右)と井山裕太王座=7月24日、東京・市ケ谷の日本棋院、菊池康全撮影

 第50期囲碁名人戦挑戦者決定リーグ戦(朝日新聞社主催)は、芝野虎丸十段が逆転優勝で一力遼名人への挑戦権を獲得した。リーグ前半に出遅れ、カメの歩みで疾走するウサギを土壇場で差した。

よもやのプレーオフ

 今期の挑戦者レースの結末を、誰が予想できただろう。

 前名人の芝野は、もちろん優勝候補だった。しかし昨年12月の開幕ラウンド(R)で、同じく優勝候補の井山裕太王座とぶつかり黒星スタート。4月に許家元九段にも敗れ、この時点で本人も「もう挑戦はない」と諦めていた。

 近年のリーグ優勝者は全勝か負けても1敗まで。2敗での優勝は19歳の史上最年少名人となった芝野自身の6年前までさかのぼる。

 リーグ中盤、周囲の目は井山と初リーグの福岡航太朗七段の2人に注がれていた。ともにスタートダッシュに成功し、5月の全勝対決は井山が制し単独首位に。翌6月、芝野は1敗の福岡を引きずり下ろし、2位グループに浮上した。しかし全勝の井山は、2局を残して一つ勝てば優勝を決める絶対優位に立っていた。そしてドラマチックな7月が来た。

 井山は連敗し、2位グループの芝野、許、福岡と並んだ。規定により、挑戦者は序列上位2人によるプレーオフで決する。1位の芝野、3位の井山の決戦となった。

 24日のプレーオフは芝野の発想の柔軟さ、秀逸な形勢判断能力を示す好局だった。

図1 黒・井山 白・芝野
230手完 白中押し勝ち

 図1 対局開始から10手目…

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