Re:Ron(リロン)編集部から

 建築家で慶応大准教授のホルヘ・アルマザンさんは、スペインにいる頃から、日本の現代建築家の作品について学んでいた。日本家屋の暗がりに美を見てとった谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」も読み込み、明るさと広さを求めるヨーロッパ建築とは別の美的アプローチを感じた。「日本の建築を見てみたいと思うのは自然な流れだった」という。

 2003年4月に来日。東京工業大(現・東京科学大)の大学院博士課程で、「日本語という高い壁を乗り越えながら」学びを深めた。

 住んでみて初めて気づくことも多かった。新宿や渋谷から30分も電車に揺られると、低層の住宅街が広がる。「夜は驚くほど静かで、ヨーロッパでいえば村のような生活」ができることに驚いた。

 駅周辺の住宅地図をプリントして眺めていたら、周りと異なるエリアがあることに気づいた。訪ねてみると「横丁」だった。小さく親密な空間は、隣の人との会話が生まれる「夜のパブリックスペース」だと知った。

 こうした研究成果を、著書「東京の創発的アーバニズム 横丁・雑居ビル・高架下建築・暗渠(あんきょ)ストリート・低層密集地域」(学芸出版社)にまとめた。

 今回のRe:Ron寄稿「成功か失敗か、東京の都市デザイン スペイン出身の建築家が描く未来」(12日配信)では、特に自動車中心の都市計画や巨大再開発が進められてきた都心部で圧倒的に不足する、公共空間の再構築に向けた大胆な施策を提案している。

 来日して20年以上が過ぎ、いろんな地域の住民からヨーロッパの事例を聞かれることが増えたというアルマザンさん。その取り組みに、今後も注目していきたい。

  • 成功か失敗か、東京の都市デザイン スペイン出身の建築家が描く未来

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