炭素製品大手で東証プライム上場の「日本カーボン」(東京都中央区)の男性社員(当時25)が自殺したのは、新入社員には難しいノルマを課され、強い叱責(しっせき)を受けたことなどが原因だったとして、労災と認定されていたことがわかった。遺族は近く、損害賠償を求めて東京地裁に提訴する。
遺族や代理人弁護士によると、男性は大学院を卒業後の2019年春に入社した。約半年の研修後、滋賀県内の研究所に研究員として配属されてリチウムイオン電池の研究開発を担った。それから数カ月後には社内の人に「フォローがない」などと伝えていたが、21年1月に社宅で自ら命を絶った。
東近江労働基準監督署は労災と認め、昨年4月22日付で保険の給付を決めた。男性が毎月提出を求められた報告書について、上司から具体的な指示がないまま繰り返し再提出を指示されたと指摘。「入社1、2年目の労働者には困難なノルマだった」とした。
上司の「わけわからん。やり直し」「そんな実験するのわけわからんから考え直せ」といった発言も「言葉尻が厳しく、経験が浅い労働者にとっては強い叱責に当たる」とした。「パワハラ」には至らないものの、強い心理的負荷によって精神障害を発症し、自殺したと認定した。
取材に対し、同社は「回答は差し控える」とした。
自室に積み重なっていた研究ノート
「会社を辞めて、大学に戻りたい」
男性が落ち込んだ様子で実家に電話をかけてきたのは、2020年11月のことだ。滋賀の研究所に配属され、1年余りが経ったころだった。
父親(59)は慎重に考える…