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スマホでQRコードを読み取ると、被災当時の地区の画像が浮かんだ=2025年3月3日、岩手県大槌町、東野真和撮影
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 スマホをQRコードにかざせば、東日本大震災前後の画像が画面に表示される。そんな「伝承マップ」を、青森公立大経営経済学部地域みらい学科の野坂真准教授がゼミ生と制作した。

 対象にしたのは人口の1割以上が犠牲になった岩手県大槌町安渡地区。空中写真を印刷した地図の中に22カ所の地点がしるされ、それぞれにQRコードがついている。それをスマホで読み取ると、震災前や津波の直後、現在の様子が映し出される。

 学生たちが地区を歩き、住民から当時の写真を約80枚集め、聞き取った話をもとに資料を調べ解説文もつけた。避難所だった頃の神社や小学校、震災直後の鉄工所と壊れた機械だけが残る今の空き地など、住民にとって思い出深い場所ばかりだ。

 マップは3月3日に公民館で披露され、集まった住民は、自分のスマホを使って映し出される震災直後の町を見た。小国美知子さん(67)は、「当時は現実なのかもわからない状態だったが、改めてこういう風だったんだなと思い出せた」。高校生は「知らなかった景色もあった」と感想を話した。

 マップは地区の掲示板に貼り、町役場や公民館などにも置いた。野坂准教授は、震災直後から安渡地区を訪れて、地域の復興計画作成の手伝いや、震災遺族からの聞き取り調査などをしてきた。震災後に結婚した妻は震災で母や祖母を失い、その墓は安渡地区にある。

 「できれば今後も場所を増やしたり動画を入れたりしたい」と野坂准教授は話している。

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