今夏、大阪府枚方市が涼しくなった夜の公園でセミ捕りのイベントを催した。自然豊かな市内にたくさんいるセミを、ふるさと納税の返礼品にするための企画だ。
セミの返礼品で枚方を盛り上げようとしているのは、昆虫の地方創生への活用などに取り組む奈良市の企業「POI」。近畿大学発のベンチャー企業で、代表の清水和輝さん(26)は大学院生でもある。
清水さんは、栄養価が高い昆虫食に関心を持ち、2023年に起業。枚方の山地や公園には、西日本に分布するクマゼミを中心に、アブラゼミ、ニイニイゼミ、ツクツクボウシなど多様な種類がいることに着目した。
24年度に市の地域経済活性化のための補助金を得て、市内で捕ったクマゼミ、アブラゼミの幼虫や羽化して間もない成虫を乾燥させた菓子を商品化。オンラインでの販売を始めた。ナッツのような味わいだという。
市は、昆虫食が持続可能な社会をめざす「SDGs」の観点から注目されていることから、SDGsへの取り組みと市の自然の豊かさをアピールできるとして、菓子をふるさと納税の返礼品として採用することを決めた。
7月下旬に開いたセミ捕りのイベントには、小学生以下の子どもたちと保護者の計50人が参加。講師を務めた清水さんは、セミには多くの栄養が含まれていることなどを説明した。市の担当者は「昆虫食が未来の栄養源としての可能性を持っていることを子どもたちに知ってもらうきっかけになった」と振り返った。
返礼品としての提供は10月ごろに始まる予定で、寄付額などが検討されている。清水さんは「なぜセミが返礼品なのかと疑問を持ってもらうことが、昆虫食や環境問題への興味にもつながると思う」と話す。
POIが得た利益の一部は、枚方産の新たな昆虫食の開発資金に充てられるという。問い合わせは市広報プロモーション課(072・841・1258)へ。