15日に開かれる見通しの米ロ首脳会談を巡り、ロシアの侵略を受けるウクライナは、「領土交換」などの重要な議題が自国抜きで決められかねないことに警戒を強めている。ゼレンスキー大統領は9日朝のビデオ演説で「ウクライナ人が占領者に領土を引き渡すことはない」と強調した。
ゼレンスキー氏は従来、重要な発信を主に夜に行ってきたが、朝という異例の対応になった。
トランプ米大統領は米ロ首脳会談について発表した8日、「(ロシア・ウクライナ)双方の利益のため、領土の交換が行われるだろう」と主張した。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)によると、ロシアは東部・南部の前線を凍結する代わりに、ウクライナが3分の1程度を保持する東部ドネツク州の全土を明け渡すよう要求している。
これに対し、ウクライナは、占領を法的に認めることはないと繰り返している。ウクライナ憲法も国民投票によってのみ領土の変更ができると規定している。ゼレンスキー氏は9日、「そこから逸脱することは誰にもできない」と強調した。
2014年「クリミア併合」の再来を懸念
ウクライナは、2014年にロシアに一方的に併合されたクリミアを含め、全領土のうち東部・南部の約2割をロシアに占領されている。
ゼレンスキー氏が懸念しているのは、14年のクリミアに続く「領土的略奪」が国際社会から黙認され、ロシアに将来の侵攻の余地を残すことだ。9日のビデオ演説では「二度あることは三度ある」と指摘。「明確かつ信頼できる安全保障体制に基づく、尊厳のある和平を伴って、戦争は終結しなければならない」と訴えた。
ウクライナ国民の大半も、ゼ…