タイとカンボジアの大規模な軍事衝突をめぐり、両政府が28日、無条件での即時停戦に合意した。仲介国のマレーシアとともに両国が発表した。トランプ米大統領が仲介に乗り出したことで、近年では例を見ない水準に深刻化した衝突は収束に向かう可能性がある。
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タイで暫定首相を務めるプームタム副首相兼内相と、カンボジアのフン・マネット首相が、24日に戦闘が本格化して以降初めてマレーシアで会談。29日午前0時からの停戦発効で合意した。双方の現地軍幹部による非公式協議の実施や、国境問題を協議する両国の委員会を8月4日に開くことでも合意した。実際に戦闘が止まるかが焦点となる。
会見でフン・マネット氏は、今回の合意が戦闘停止や避難の解消、タイとの二国間関係の再構築に資すると「強く信じる」と話した。プームタム氏は、「双方が誠意を持って適切に実行される」停戦に合意したと述べた。両者が、トランプ氏の「決定的な仲介」(フン・マネット氏)に謝意を述べる場面もあった。
会談は東南アジア諸国連合(ASEAN)で今年の議長国を務める、マレーシアのアンワル首相の公邸で実施。米国と中国の駐マレーシア大使も同席した。
両国で長年続く国境紛争は今年5月、係争地で銃撃戦が起き、互いに禁輸や国境検問所の閉鎖などの措置をとる事態に発展。7月24日に再び銃撃戦が起きると、両国軍は各地で交戦状態に。戦闘地域は拡大し、両国の死者数は民間人を含めて30人を超え、避難者数も10万人規模に膨らんでいた。係争地にある世界遺産のプレアビヒア寺院も損傷した。
トランプ氏は26日、両首脳とそれぞれ電話協議をし、双方が停戦協議を行うことに合意したと発表。「戦闘が続いている限りは、どちらの国とも(関税)合意は結ぶつもりはない」との意向を双方に伝え、事態の収束を迫っていた。トランプ氏は28日、「トランプ大統領の介入の後、両国が停戦と和平に合意した。何千人もの命が救われた」とSNSに投稿し、自身の手柄だと誇った。両国との貿易交渉の再開も指示したという。ルビオ米国務長官は同日、停戦合意を歓迎する声明を出し、「トランプ大統領と私は即時の暴力の停止に尽力しており、両政府が紛争を終結させるという約束を完全に履行することを期待している」と述べた。
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