北海道苫小牧市で確認されたタンチョウ=2022年7月11日、苫小牧市、日本野鳥の会提供

 北海道苫小牧市と厚真町で、大阪ガスのグループ企業が計画する「苫東厚真風力発電事業」について環境相は、抜本的な見直しを求める意見を出した。現場の湿地は国の特別天然記念物タンチョウの繁殖が確認されており、日本野鳥の会が「貴重な繁殖地を守るべきだ」として計画中止を求めている。

 意見は25日。風車の設置取りやめや配置の変更、追加の環境保全措置を求めた。大ガス側はさらなる対応に迫られる。

 準備書によれば、海岸に近い約336ヘクタールの区域内に出力4300キロワット程度の風車を10基建設する計画。2028年度からの営業運転開始を目指している。

 大ガス側はタンチョウの繁殖に配慮して風車5基を海側に設置する計画変更を行った。しかし、環境相はタンチョウのほか、国の希少種に指定されているオジロワシやチュウヒの「移動経路の阻害や衝突事故、生息地放棄といった重大な影響が懸念される」と指摘した。

 大ガス側は、朝日新聞の取材に「各自治体や住民の皆様からのご意見、真摯に受け止めております。皆様のご意見を踏まえまして、本事業方針等について検討を重ねて参ります」とコメントしている。

 タンチョウは北海道を代表するツル。近年、保護活動によって数が回復し、道内の24年度の越冬分布調査では過去最多の1927羽が確認されている。生息地は道東が中心だが、今回の計画地付近は道内での分布の西端の一つとされる。

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