うすい緑色のほぼ正方形のふせんには、漢字練習帳のような十字の点線が入ったマス目が四つ。その名は「マス目フセン“Kaketa!”」だ。
漢字練習帳やドリルでは、間違えた漢字を訂正するスペースが少ない――。そんな教員の声から個人で生み出し、今では全国の書店などでも販売している。
マスではなく、当事者の声をきいて
教員が匿名で相談しあえるサービスを作成、運営していた。個人のSNSアカウントに、教員らのフォロワーが数百人おり、日常的に交流をしていた。「このコミュニティーの熱量を何かに生かせないか」。思いついたのがものづくりだった。
当時は大手文具メーカーで商品開発を担当。ただ、どうしても売る相手は数百万人のマス(大衆)を想定し、企画から販売までも1年以上かかるのが常だった。ユーザーの声を直接聞くのにも、時間やお金が膨大にかかる。教員は人数が限られているが、コミュニティーから直接声を聞くことで、現場で必要とされる商品が作れると考えた。
商品ができるまでわずか9カ月
2022年1月末。思い切って会社を辞め、商品開発に乗り出した。LINEでオープンチャットをつくり、ネットのアンケート機能を使って学校での困り事を聞いた。目にとまった意見が、漢字訂正のスペース問題だった。スペースの拡張ならふせんがいいと考え、色やマス目のサイズ、線の色をコミュニティーに相談。集まった意見の中で、白い紙だと文字を読みづらい子がいることを知り、ふせんの色は緑色に決めた。
費用はクラウドファンディン…