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ブレイキンでパリ五輪に出場するマニージャ・タラシュ。「ブレイキンは、ダンスというよりスポーツや芸術、文化だと思っている」=2024年7月13日、マドリード郊外、長島一浩撮影

 屋外で自由にダンスを踊り、他の人から認められ、褒められる。それだけのことが、アフガニスタンで生まれ育った女子ブレイクダンサーにとっては幸せであり、夢だった。「タリバン(暫定政権)にとって、ダンスは『罪』。でも、踊っている時は、難しい問題から解放される」。7月中旬、スペイン・マドリード郊外で本番に向けて練習に励むマニージャ・タラシュ(21)は言った。

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 米ニューヨークのストリートで1970年代に生まれた若者文化「ブレイキン」との出会いは、首都カブールに住んでいた4年前の秋。SNS(フェイスブック)で、アフガニスタンの少年が頭を床につけて体を回転させる動画を見て、「合成した偽動画じゃないか」と衝撃を受けた。検索すると、他国の人もやっている。見よう見まねで自室で床に頭をつけてみたが、体は回転しない。難しいことほど挑戦したくなる。「私もやりたい」と、動画の少年にメッセージを送った。

 少年が所属するカブールのブレイキンチーム「スペリオール・クルー」に参加したが、メンバー56人のうち女性は一人だった。親戚からは「結婚するために料理や掃除を学べ」「ダンスは悪だ」と反対されたが、「女性もできることを示したい」と決意した。

 ブレイキンのイベントのたびに会場の近くで爆発があった。大きな音がして、屋外に出ると、妊婦が乗るタクシーが燃え、死と隣り合わせの日常を改めて感じた。

不審な男性、シャツの下に自爆装置

 その後、練習場には連日、不…

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