ソウルで6月に開かれた「ソウル国際ブックフェア」。15万人が訪れた=主催者提供

 6月18日から5日間にわたって、ソウルで開かれていたソウル国際ブックフェアに行ってきました。今年は「頼れるもの」がテーマ。「本こそが、最後に頼れるもの」という意味が込められているのでしょう。

 会場は若い女性客が多く、驚くほどの大盛況。前売りだけで全期間分のチケット15万枚が売り切れ、当日入場できない客が続出した、とニュースにもなったほど。最大の理由は、出版社がこれまで築いてきた「ファン戦略」にありそうです。

 韓国の多くの出版社はユーチューブチャンネルなど自社メディアを持っています。たとえば文芸出版社「文学トンネ」は、「済州島4・3事件」をテーマとしたハン・ガンの小説などを、済州島出身の超人気アイドルらが朗読するといった動画を配信しています。「ブッククラブ」というオンライン読書会を主催している出版社や著者も多く、その会費による利益が、書籍の売り上げを超えることもざらだそう。本を中心にビジネスを多角化させ、本をイベントとして楽しむ動きは広がっています。

 出版社や著者が、ファンと出会う「発表会」であるブックフェアは、いわばK―POPで言うコンサートのようなもの。出版社や著者たちは、フェアに向けて本の制作状況をSNSで発信し、衣類やブックカバーなど独自のグッズを多く用意していました。報道によると、フェアのグッズの売り上げは書籍とほぼ同額だったそうです。

 私はもともと本は本として純粋に楽しむべきだと思っていました。でも、「チェッコリ」の客層も変わってきていて20代、30代の若者が増えている。変化が必要だと感じています。

 私たちが東京で秋に開催するK―BOOKフェスティバルもちょうど準備を始めたところ。どうしたらソウルのような熱を生み出せるか。仲間と相談したいと思っています。

共有
Exit mobile version