大阪・関西万博では会場へのアクセスがたびたびニュースとして取り上げられる。鉄道で行く夢洲駅の混雑やシャトルバス利用の難しさ……。万博で関心のあるイベントの取材を予定していた記者は、どうにか混雑を避け手間を省いて会場に行きたいと考え、ひらめいた。「自転車で行けばいいじゃない」
大阪市北区にある朝日新聞大阪本社から此花区の万博会場までの距離はグーグルマップで調べると約16キロ。記者の住まいは大阪市南部なので実際には数キロプラスとなるが1時間程度でたどり着ける。5月下旬の平日に決行することにした。
万博のウェブサイトの交通アクセス案内(https://www.expo2025.or.jp/expo-map-index/access/)を見ると、鉄道やシャトルバス、離れた駐車場からシャトルバスを使うパークアンドライド、船と並んで自転車が示されている。ちゃんと主要な交通手段として位置付けられている。
駐輪場(万博サイトでは「自転車駐車場」と呼称)は2カ所。会場まで歩いていける予約制の有料のものと、夢洲駅から1駅離れたコスモスクエア駅にある無料のものだ。鉄道に乗り換えるのは混雑回避の目的から外れてしまうので、有料駐輪場を予約することにした。
予約は万博P&R駐車場予約システム(https://parking-reserve.expo2025.or.jp/)から、オンラインで手続きする。IDとパスワードを設定して利用者登録し、ログインして先に進む。
すると、「車種」と「車両ナンバー」などを選択、入力する画面に。パークアンドライドを前提とした表示に一瞬ひるんだが、車種で自転車を選択するとナンバー入力の項目は消えた。
あとは駐輪場の利用日や到着予定時間を選択し、なぜか出発地も大阪市内の何区まで細かく聞かれるので回答。予約を完了したあとに支払いに進む。
支払いはパークアンドライドと同じでクレジットカードのみ。料金は1回500円で、鉄道の往復運賃(コスモスクエア―夢洲は660円)と比べれば妥当な感じもする一方、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの最寄り駅のユニバーサルシティ駅駐輪場は無料、大阪市中心街の駐輪場はばらつきはあるが半日で200円前後なので、割高な気もする。
予約当日の朝、カメラとノートパソコンを入れた重いリュックとともに出発!
万博サイトによれば、「淀川リバーサイドサイクルラン」というルートを通れば会場に行ける。記者は詳しく調べることなく、川沿いに出れば良いのだろうと考え、大阪市福島区の野田阪神駅あたりから淀川に向かい北上。だが、川に架かる橋の手前を曲がろうとしたところ、工事中で通行止めとなっていた。
慌ててルートをスマートフォンで調べると、此花区の大阪市下水道科学館あたりから歩行者・自転車道に入れるようで、そこまでは市街地の市道を走る必要があった。片側3車線のトラックが行き交う道などを2キロほど通過したあと、川沿いの歩行者・自転車道にたどり着いた。
川沿いは勾配もほとんどなく快適に走行できる。ただ、歩行者優先で速度抑制を図るためか、所々に自転車の幅ぎりぎりの金属製ポールが設置されている。記者は幅の小さいロードバイクだったのでそれほど困らなかったが、タイヤ幅の大きい電動アシスト付き自転車などでは通過に苦労するかもしれない。
会場には埋め立て地をつなぐ大きな橋2カ所(常吉大橋、夢舞大橋)をわたる。自転車をこぐことはできず、降りて押し歩く。アップダウンはきついが、常吉大橋の脇にはテーマパークのような外観で有名な舞洲スラッジセンターがそびえ、夢舞大橋からは万博会場の大屋根リングが見えるので、目を楽しませながらわたることができる。
夢舞大橋を越えたあと、5分ほどで駐輪場に到着。駐輪場の案内看板は直前まで全くないが、交差点に立っている万博関係者に聞くと教えてくれるので、迷うことはなかった。
駐輪場の係員に予約完了を示すQRコードを求められたが、スマホから予約サイトにうまく接続できない。操作に四苦八苦していると予約完了のメールで構わないとの助け舟を出してもらい、メールを示して駐輪場に入った。平日の午前10時30分ごろの駐輪の状況はがら空き、1割にも満たない印象だった。
駐輪場から会場は歩いて5分程度。駅の混雑を避けて入場することができた。
今回、記者は特定の取材目的のため会場内を長距離歩くことはなかったが、朝から会場入りして万博を丸一日楽しもうという場合には、自転車利用は帰りを含めて体力面を考慮する必要があると感じた。今後、開催期間中は気温が高くなっていくため、熱中症や脱水症状を防ぐ対策も欠かせない。歩行者・自転車道には店や自動販売機はなく、夢洲にはコンビニエンスストア、歩行者・自転車道に入る前の地域には量販店があるため、補給の計画を立てておくとスムーズだと思った。