(9日、第107回全国高校野球選手権大会1回戦 市船橋2―6明豊)
チャンスに弱い。自分でそう思っていたが、甲子園でひっくり返した。
4点差でもう1点も失いたくない八回表1死二、三塁、中堅に入った市船橋の井上舜也(3年)は高く上がった飛球をつかみ本塁へ投げた。ストライク返球となり、タッチアップから本塁を狙った三塁走者の生還を阻止。嫌な流れを断ち切った。
その裏、2死一塁で打席に入った。
ベンチには、記録員の宮崎亮汰(同)が誰よりも声を張る姿があった。家の方向が同じで、毎日一緒に下校している。どんな時も話を聞いてくれ、打撃で悩んでいた時も「お前はできる。人一倍やってるんだから大丈夫」と支えてくれた。
その姿を見て落ち着いた。
「直球が来たら思い切り振ってやろう」。狙い通り、外角よりの直球が来た。思い切りバットを振ると、打球は右翼へ。右翼手の悪送球を見逃さず、一塁にいた花嶋大和(同)が生還し、自身は二塁へ進んだ。
「打てたのはうれしいけどあと3点。まだまだこれから」。そう冷静に考えたが、これが市船橋の最後の得点になった。
試合後、「3年間、本当にありがとう」。目を赤くして宮崎に感謝を伝え、握手を交わした。