憧れと、それに相反するもどかしさや葛藤を臆さずに表す。チカキサダのデザイナー幾左田千佳がインタビューに応じ、かつて身を置いたバレエの世界と服との関係を語った。今夏には、バレエ衣装にも挑戦。2026年春夏シーズンの東京ファッションウィーク(TFW、楽天ファッションウィーク東京)では「華やかではない」ムードで新境地を見せた。次なる舞台はパリだ。

 ふわふわのチュールも、かわいいピンクも、息を潜めた。今月上旬のTFWで発表した新作は、アンダーグラウンドな空気をまとっていた。前季の大規模なランウェーとは一転、会場は決して広くない地下スペースだ。限られた数のゲストを前に、化粧っ気のないモデルたちがたたずむ様は、バレエダンサーの抱える試練を浮かび上がらせるようだった。

 テーマに「Trace」を掲げ、輪郭や曲線に着目した。複数の破れたストッキングを重ねた服は鍛え抜いた身体を沿うようになぞり、Tシャツの縦糸をほどいたロングドレスは、肌と服との間にある空間を透け感で演出した。肩パッドがついたようなボリュームあるスカートは脱構築的で、パニエを思わせる。

諦めたバレリーナの夢 目を向けた先に

 きらびやかな舞台とは一線を…

共有
Exit mobile version