(30日、第97回選抜高校野球大会決勝 横浜11―4智弁和歌山)
背番号「13」が三塁側ベンチを飛び出し、マウンドへ走っていった。
六回裏。渡辺颯人投手が相手打線に打ち込まれる厳しい局面。山田希翔主将(3年)は監督からの指示を携えて「焦らずに、一つずつ踏ん張っていこう」と、集まった仲間に声を掛けた。
遊撃手として昨秋の近畿大会の試合に出場中、打球処理の際に右肩を脱臼してしまった。手術してリハビリをしながら、選抜大会ではベンチに入った。
この日は監督からの伝令だけでなく、三塁コーチも務めた。もちろん、ベンチの中でも大きな声を出して守る仲間を鼓舞し続けた。
新チームの主将に選ばれて以来、リーダーの形を考えてきた。
前の主将は「ぐいぐい引っ張るタイプ」と感じていた。「自分はみんなの意見を聞くタイプ」。早速、選手全員が参加するミーティングを開き、勝つために何をすべきかを話し合ってきた。
主将として、チームを牽引(けんいん)しながら頂点を目指してきた選抜大会。試合を重ねるたびに、選手だけでなく監督、スタッフみんなが同じ方向に向かっていることに手応えを感じた。
それでも、昨秋の明治神宮大会で優勝した横浜の壁は厚く、あと一歩及ばなかった。「悔しいの言葉しかない」。試合後、瞳が潤んでいた。
戦った5試合で唯一、準々決勝で守備についた。最終盤に一塁手としてグラウンドに立った。今はキャッチボールもできるようになった。リハビリも続けている。
「次は夏。今度こそ日本一になる」と言い切った。もっと「強い智弁和歌山」になって、甲子園に戻ってくる。