短歌時評 山崎聡子
歌壇俳壇面で月1回掲載している「短歌時評」。今月は歌人の山崎聡子さんが没後25年を迎える永井陽子の復刊歌集を取り上げ、実人生と短歌表現の距離に意識的だった永井の歌が読み継がれている背景を探ります。
今年は四十八歳で亡くなった歌人・永井陽子の没後二十五年にあたる。
ひまはりのアンダルシアはとほけれどとほけれどアンダルシアのひまはり
あはれしづかな東洋の春ガリレオの望遠鏡にはなびらながれ
音楽的な韻律と物語性を湛(たた)えた作風で愛誦(あいしょう)されてきた永井の歌だが、近年では歌集の入手が困難となっていた。今年に入り、文庫版『永井陽子歌集♯(シャープ)』、同『♭(フラット)』(石川美南編)が発行されたことはファンにとって朗報といえるだろう。
四月、大宮図書館での企画展…